運送業の要!トラック運賃のしくみと変動要因を分かりやすく解説

トラックドライバー

私は運賃を上げよう!とよく言います。

でも疑問に思っている方もいらっしゃるのではないかと思うんですね。

「トラックの運賃ってどう決まるん?」と。

なので、今回はトラックの運賃について少し書いていこうと思います。

定期(運行)便とフリー(運行)便

まず、トラックの運送形態からお伝えします。

トラックは定期運行便もしくはフリー(スポット)便運行便が主な運行形態になります。

定期便とは?

定期便とは言葉の通り、定期的に運行する便になります。

毎日運行があり、決まったお客様の荷物を取り扱う便です。固定のお仕事をする運行のことですね。

定期便とひとくくりにできないほど運行内容は様々ありますが簡単にまとめるとこんな感じ。

基本的に毎日(月曜~金曜もしくは土曜)の運行で日曜や祝日はお休みだったりします。稼働はお客様の業務に合わせるので平日が固定でお休みの場合もあります。

また、特殊なトラックは定期運行に従事することが多いです。

大型のゲート付きトラックや高さ3.0m以下のトラック、ユニック車や平ゲート車などは定期運行している場合が多いですね。

フリー便とは?

フリー便とは定期便と違い、日々のお仕事(荷物)が決まっていない運行のことです。私の仕事はこのフリー便のトラックに積んでもらう荷物の手配です。

フリー便のトラックは長距離、というイメージもありますが地場仕事のフリー便もあります。

定期便との大きな違いは運賃がその都度、荷物が決まったタイミングで決まるという点や毎日運行があるわけじゃない、という点です。

フリー便の醍醐味はやはり長距離運行になりますが、行った先で荷物が無ければその日の運行はなくなり、翌日に積み込みに行くというスケジュールになったりもします。

ですが、ここは配車マンの腕の見せ所。

その日の運行を取りやめにして休みにする、というのは極力避けなければいけないことなのでどれだけ荷物が少なくても、荷物を積ませて車庫に戻らせなければいけないという配車マンのプライドがいかんなく発揮され、積んできた荷物をおろした日には別の荷物を積んでもらうが基本運行となります。

水準を上げたいし安定もさせたい。それが運賃。

定期便もフリー便もやはり運賃水準を令和バージョンにアップデートしなければいけないと思っています。

運賃を決める時に一番大切なのは「原価計算」です。

トラックが1運行するのに必要な経費やどれくらいなのか、というのは運送会社によって変わります。

なのでまずは自社トラックの「原価」を知らなければいけません。

原価計算の方法についてはいずれ記事にしようと思っているので今回ここで詳しい説明は割愛します。

では、次に私がよく言う「運賃を上げたい!」の運賃についてお話します。

ここで言う「運賃」はフリー便の運賃になります

フリー便の運賃は先ほども書きましたが、荷物と運賃を口頭で聞いて契約を結ぶ(口頭契約)なので自社の原価があったとしてもその原価を割ったりあるいはそれ以上にもらえる場合もあります。

どういうことなのか?

ちょっとまとめてみました。

需要と供給のバランスが保たれている場合

トラックが運行する積み地、おろし地それぞれに荷物が確保されていて空車になってもすぐに荷物が積める状態であれば設定運賃に大きな変動はありません。

出発地で依頼を受ける荷物の運賃もおろし先でおろした後積む荷物の運賃も相場帯で動きます。

この安定状態の運賃水準を今よりも上げていきたい。というのが私の目標の一つです。

バランスが安定していると「順調だな。安心安心。」となるのが人の性なんですがここもしっかり毎月の原価、上昇率のあったコスト分の転嫁を行って1年に1度の運賃交渉相談をしています。

定期便の場合は、毎日お仕事渡してるんだから無茶言わないの、と言われがちなので交渉は実はすごく難しいのですが継続していくしかないです。やり続ける。これが大事だと思います。

もちろん、切られた運行便もあります。厳しい世界です。

需要と供給のバランスが保たれていない場合

イラストだけでもおなか一杯、ってくらいグチャっとしています。

荷物がなければ出発地からおろし地へ行くトラック自体がありません

そうすると着地側を出発点とする荷物があふれてトラックの台数が足りなくなります。いつもなら来てくれるトラックが来ていない、いつもなら行ってくれる運賃でトラックが見つからない、などの荷物過多の状態になります。

トラックが無いから運べない、ということは言えませんので着地側を出発地とする運送会社のトラックを手配します。これを「立ち便」と言い、車庫に戻るトラック(帰り便)に比べて運賃が割高になることが多いです。

コロコロ変わる運賃、どうにかしたい

このように、運賃というものは荷物の量によって変動することがあります。

特に国内で荷物の偏りが多いのが九州方面です。2年くらい前に作った九州地方の運送形態の特徴のイラストもご覧ください。

九州からのトラックは野菜のシーズンにかけては野菜を積んで関西や関東まで運行することが多いですが野菜の出荷が止まると九州から車両がやってこなくなります。

すると、関西や関東から九州に持っていきたい荷物があふれてきてしまうのです。荷主さんはどうしても運んでほしい。でもトラックがいない。

運賃を上げて行ってくれるトラックを探すしか手がない。というループになります。

なぜなら九州に運行してもその後、九州からの荷物も少ない。そうすると九州発の荷物の運賃が安くなるので出発地の荷物の運賃を沢山もらっておこう、そうしないと赤字になるから、なのです。

サプライチェーンマネジメントという黒船

こういった荷物とトラックの供給バランスを整えるために「サプライチェーンマネジメント」っていうものが考えられて出来上がりました。

サプライチェーンマネジメントはサプライ(供給)のチェーン(連鎖)をマネジメント(管理)するという考え方。簡単に言うと、需要と供給のバランスが一定になるように原料の調達から流通、お金の流れに至るまでしっかり管理して、お客様の手元までの流れをスムーズにしようねという管理方法です。

この考え方が物流界隈に広がってから結構な年数が経ちますが、すいません。

未だにしっかり管理されているのか現場ではわからないです。

トラックの供給過多になったと思えば、荷物の供給過多になる。サプライチェーンマネジメントが広まってからもこの連続の毎日をこなしているだけだからです。

物流業界に黒船のごとく現れた「サプライチェーンマネジメント」の実態は、メーカーから消費者のもとへ届けるまでのざっくりな流れは明確にできているけれど、流通の要であるトラック手配については空洞化になっていると思わざるを得ません。

法的拘束力のない「標準的な運賃」

国交省が定めた「標準的な運賃」も運賃の安定化、低賃金脱却に向けてすごくいい試みでした。

ただ、この素晴らしい試みは法的拘束力が皆無のため、運賃交渉のテーブルに持って行った場合、お客様から「一体何の数字ですか?」状態になること間違いなしですし最悪の場合、「ぶぶ漬けでもどうどす?」くらいの勢いで追い帰されます。

この全く意味のない運賃リストの唯一の使い道は

「国の運賃設定はこの数字です。でも見てください。私たちの見積もり運賃を!」

という叩き台です。私は運賃交渉時、ホップステップジャンプのホップで使います。

ですが、現場との温度差があるので現実はこうなります。

全日本トラック協会の現理事長のひとりが標準的な運賃は認可運賃って考えていいよ。

って言うてしまったらしいですね。あーあ。

事務方のトップがこのような発言をしたことで業界紙からもすごく怒られている。

それくらいこの「標準的な運賃」を糧にした運賃交渉というのは夢物語に近いものであるということがわかります。

それではどうするのか

運賃交渉を円滑に進めていくためには社内、社外でやることがあります。

まずは社内。

ここは自社の数字を知る、と言うことですね。

原価計算を行い、日々の運行に対するコストを把握する。

変動するのは人件費、燃料費、高速代。

月間で出してみると年間が出ますからじゃ次の年度どのようにして増えた分を運賃に転化していくかを考えてみる。これが王道の方法だと思います。

そして社外。

ソフト、ハードそれぞれでやっぱり日頃から準備が必要だよなと思っています。

まずソフト面。

ここはお客様との人間関係の構築。これしかありません。

担当者の方と日頃からしっかりお互いの業界について話をする、先方の仕事の流れや業界の動向をしっかり把握するなど、お客様への理解は必要不可欠だと思います。

知らない人が急に「ねえ、運賃あげてよ、運送業大変なんだからさ」なんて言いにきたら怖いですからね。やっぱり相手のことを理解する、こちらのことも知ってもらうと言う関係性を作っていくことは大切だと思います。

とらこ
とらこ

逆に全然知らない人が急に「おい、運賃下げろ」って言ってきたら頭おかしいんじゃないかって思いますしねw

そしてハード面。

運賃交渉をするのに必要な資料の作成。原価計算表を持っていくだけじゃなくて見積もり金額を細分化してコストを運賃に転化する項目を明確にするのがいいと思います。

運賃交渉を行う以前から、見積書を出すときに「運賃:80,000円+税」と出すんじゃなくて車両費、人件費、待機料、荷役料、サーチャージ料などに分けると交渉時にどこが上がるのかを明確に示せると思います。

まとめ

運賃は運送会社の原資であり、私たちのお給料の源です。

なのでとても大切なものですし、できることならたくさんもらいたい。

だけど、私たち運送業というのは【仲介業者】なのでなかなかここの交渉がうまく進まないのが現状です。

それに加え、実運送までにたくさんの会社が運賃を搾取する「多重下請構造」も運賃交渉がスムーズにいかない原因のひとつです。

業界大手の運送会社も運賃交渉には及び腰。大手が交渉しないのになぜ中小の運送会社が運賃上げてくれっていうてくるん?おかしいやろ。と言われたことも多々あります。

人手不足だ、と言われる運送業が今一番必要なのは魅力的な労働環境です。

魅力的な労働環境とは何か?

シンプルに言えばお金です。

お金というのは本当に魅力的でたくさん稼げるようになるとみんなに自慢したくなるものです。

うちの会社で働くとすごく稼げるんだよね。という声が新しい人たちを業界に呼び込みます。戦国時代から人が集まるのは「利」です。

どの武将につけば稼げるのか。どれだけ領土が増えるのか。人は「利」と「人」に集まるのです。

ですが今は戦国時代とは違います。力づくで仕事を奪うことはできません。

だからこそ、話し合いでもらえる「利」を増やす。これが今のビジネススタイルです。

昔は刀、今は話し合い。どちらも戦いなので事前準備はそつなくしっかり行うことが求められますし何より戦いに踏み出す勇気が必要です。

運送会社の運賃交渉は非常に難しい。だから1回挑戦してダメだったら諦めてしまいがちです。でも1度失敗したからあきらめるんじゃなくてやり方を変えてみてもいいし、いろんな人の意見を聞いて方法から見直してもいい。

話を聞いてもらえる可能性がゼロじゃないから私はこれからも運賃交渉をしていきます。

結局は続けていくしか成果は出ない。

なかなか前に進んでいる実感がないから「やり遂げた!」って思えることは少ないですが続けることで成果が出ることもあります。というかその方が多いです。

腐らず頑張りましょう!私も頑張ります。

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