政策パッケージの波紋ー高速道路上の速度引き上げへの懸念と深夜割の矛盾

2024年問題

タイトルを考えるのがすごく苦手なので毎回すごい長いです。すみません。

先日発表された政策パッケージにTwitterでもかなり議論された「高速道路上の速度引き上げ」が掲載されていました。そもそも、私はこれを思いつきアイデアレベルだと思っていたのでまさか政策パッケージにそのまま載せてしまうとは・・・という浅はかさにずっと怒っています。

「高速道路上の速度引き上げ」とは?

現在時速80km走行が義務付けられている大型車の速度を引き上げる、というルールそのものからひっくり返しちゃうルールが生まれそうです。それが物流革新に向けた政策パッケージの(2)物流効率化の6項目目「高速道路のトラック速度規制の引き上げ」です。

ですが、速度を引き上げることへの安全を保障する担保はどこにあるんでしょうか

新技術の普及、とありますが自動運転の事を言ってらっしゃるんでしょうか?どんな新技術が安全の担保になるんでしょうか。

ITS推進は国が進める道路技術推進の1つですが果たして10t以上の荷物を積んだトラックが速度を引き上げて事故が今よりも減る(もしくは現状維持)という確信があるのでしょうか。本当に謎です。

今まで守らせてきたルールをひっくり返してまで推し進める働き方改革ってそんなに大事なんでしょうか。一番大事なのは命だし、そこで働く人たちの安心と安全です。

今回の速度引き上げの目的は「今までよりも早くトラックを目的地に到着させるため」だそうです。物流の効率化、という大義名分を掲げての案のようですが効率化と命とどちらが大事なのでしょうか。

そしてもう一つ。この案は労働時間の短縮をにらんでの案だとは思います。ですが浅い。考えた方、トラックは「ひと」が運転してるんです。無人じゃない。

ルールや自分たちが決めたことを守らせるためにリスクを取れ、というのは筋が通らない。

新・深夜割とは?

ではここで新しい高速道路の深夜割引についてみていきましょう。

高速道路各社と国交省は上記案が出る前(2023年1月20日)に高速道路の深夜割引の見直し案を発表しています。

令和6年度施行開始予定の高速道路深夜割の新しい内容
令和6年度施行開始予定の高速道路深夜割の新しい内容(激変緩和措置分)

簡単にまとめてみました。

今の深夜割と結構大きく内容が変わります。

まず、深夜割適用時間帯のみの割引になる、という点。

今までは深夜割適用時間に高速に乗って適用時間が終わっても下りるまでは深夜割が適用されていました。

ですが、新しい割引体制になると深夜割適用の22時~翌5時の間分しか割引がされなくなります。

そして、400km超の長距離を走る場合は

401~600km▶割引が40%

601~800km▶割引が45%

801km以上▶割引が50%

となります。

なんだ、すごい割り引かれるじゃないか。と思われるかもしれませんが、先ほど書いたように深夜割の適応は適用時間帯のみです。

つまり、トラック運行において適用時間の8時間で800km以上走る、なんてことは現実的にはかなり難しいというかほぼ不可能に近いと思います。

時速100kmで走ったら8時間じゃん。と思われるかもしれませんがそれはあくまで理論値であり時速100km出せる車の場合の数字です。

トラックというのは4時間に30分の休息をとらなければいけないルールがあります。そして時速の制限(80km/時)もあります。

深夜割適用時間内で走れる距離は乗用車よりも格段に少ないはずです。それなのにこれを「長距離利用者の負担軽減措置」としてしまうのはなぜなんだろうと不思議に思っています。

まだ運用されていない段階なのでもしかしたら追加や変更が今後出てくる可能性はきっとあると思いますのでここは今後を見守るしかなさそうです。

考察した結果わかったこと

高速道路の速度引き上げと深夜割の説明を見て矛盾に気づいた方はもう相当数いらっしゃると思います。

私レベルでもわかる矛盾です。それがこちら。

新しい深夜割が適用された場合、どうなるかというと

深夜割が終わるまでに下道に流入するトラックが激増。つまりそのトラックに乗っているドライバーさん達は働いているという状態になるということです。

0時東京ゲート問題が降り口ゲート問題に代わるだけです。

深夜割を時間内だけでしか適用させない、というこの案は働き方改革への矛盾を生じさせます。

つまり、労働時間を短くしようぜ!労働時間の効率化しようぜ!を掲げる働き方改革への対抗勢力が新しい深夜割案なのです。

そして、速度引き上げへの矛盾。

運送会社が「労働契約法」で安全配慮義務措置を行い、事故撲滅を進めている中で大元である国が「大丈夫!行ける!」で今までの安全配慮義務をすっ飛ばすことが果たして正解なのかという矛盾です。

効率化より、労働時間短縮よりもなによりもまず人命優先であるべきだと私は思います。

まとめ

私はドライバーではありません。

毎日点呼場で点呼をするドライバーさんの顔を見て「気を付けて。いってらっしゃい」と送る側の人間です。

今日も無事にドライバーさんたちが事務所に帰ってきますように、安全に笑顔で車庫に戻ってきますようにということを毎日思って送り出しをしている人間からしたら、安全を最優先できないような案はただの思いつきであり、トラックに乗っているのが人であるということを忘れていると思ってしまうのです。

トラックドライバーは事故を起こせばすぐに実名が報道されます。

すぐに会社名がわかります。だからこそ、運送会社は「絶対に事故を起こさないよう」な方法日々考え、毎月安全会議を行っているのです。

その努力を軽視するような高速道路上の速度引き上げは絶対に反対です。

そして、新しい深夜割。割引率が大きくなろうが走れる時間が限られるドライバーさん達にとっては恩恵があまりない。働き方改革で今以上に走れなくなることは明白。であればどこでコストを抑えるか、と言われれば高速料や燃料費しかないのです。

高速料金くらい荷主事業者に払ってもらえばいい、と口で言うのは簡単です。

ですが、政府自体が取り組んでいる「昔からの商習慣」の中に荷主優位がドカンと居座り続け、法律でも高速料金支払い義務化を律しないのであればもう一度再考してもらう部分は多々あると思っています。

何度も言いますが、安全に安心して働ける社会が最優先です。

誰かの決定だから、ルールだから、とそこで働く人たちを危険にさらすことだけは絶対に反対です。安全に優先するものはない、というトラック協会のスローガンがありましたが現状のままいけばそのスローガンすら汚しかねません。

安全が度外視される案であれば何とかして再考の余地が無いかもっともっと議論していいと思います。

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