2024年問題を盾にする国の思惑に気づいてしまったのでまとめました

2024年問題

2024年問題への対応策やガイドラインが続々と世に出てきています。

働き方改革を実現させようとすると生じる、運送業の問題が2024年問題となっていますがここにきて私は2024年問題の本質を見つけてしまったかもしれません。

2024年問題=運送業から職人の締め出し!?

結論から言います。

2024年問題の提起は「国による運送業から職人トラックドライバーの締め出し」が目的ではないかと感じています。

では、職人トラックドライバーとはどういう人たちを言うのか。

まとめてみました。

  • 長距離運行の時間配分が自分でできる人
  • 積み込み、おろしの作業技術が高い人
  • 動けるならいつでも働くよ!な人
  • 運送業の仕組みを包括的に理解している人

このように技術、スキルの高い現在の運送業の要であるドライバーを国は業界から無くそうとしているのではないか、というのが私の見解です。

なぜなら、国の提言する2024年問題のガイドラインが職人気質のレベルの高いドライバーを「誰でもできる」水準にしようとする意図が見え隠れするからです。

ですが果たしてそれが王道の正解なのか。私は違うと思っています。

2024年問題解決策が実現しない理由

現場とズレまくっている解決策の中身

国が2024年問題はこのようにして解決しよう!と肝いりで提案した2024年問題ガイドラインが現場の問題解決に全く効果がない。

ガイドラインには「(荷主企業による)取り組み実施が必要な解決策」という項目がいくつもあります。

ですが、これが本当にゆるい。

例えば実施が必要な事項の中にある項目でこのようなものがあります

①荷待ち時間・荷役作業等にかかる時間の把握、②荷待ち・荷役作業等時間2時間以内ルール。

これは現場サイドからしても「おお!」となる項目なのですが

まず①の時間の把握。

把握させてどうするのか、までの記載がない。

②の2時間以内ルールの設定。

これも2時間以内で作業終わらせようね!がんばろうね!くらいゆるい圧しかない。

今現在、現役のドライバーさんたちは今まで待機時間が長かろうと出発が遅くなろうと到着時間は指示通り守って納品をしています。

今更こんな甘っちょろいルールとか解決策を作成したところで全く解決にならない。

なので自分で長距離運行の時間配分、体調管理ができるドライバーさんたちへの解決策の貢献度は低いと言わざるを得ません。

解決策を実現するためのお金を誰が出すのか明確になっていない

大手運送会社、大手荷主であれば解決策への資金投入は大きな課題ではないと思います。

ですが、中小零細企業になると解決策への資金投入は非常に難しい。大きな壁になります。

2024年問題もわかってるんだけど、他に費用をかけるところが沢山あるからそこに費用かけて企業の存続に必要な部分を強化しないと!という会社は少なくありません。

全ト協の2024年問題へのガイドラインにも「問題点の共有、把握、実施」と並びますが果たしてどれだけの規模の事業社にむけての発信内容なのかさっぱりわかりません。

これができる企業が果たして運送業の何割あるのか。

全国の運送会社は現在約5万7800社あります。

そのうちの約9割が中小零細企業になります。果たしてガイドラインに則った「共有、把握、実施」ができる企業が何社あるのか。現実味が非常に薄い気がしています。

中小零細の運送会社は配車係どころか経営者ですら運行している会社が多いですし、ドライバーから経営者に身を立てるくらい仕事ができる方が社長さんになっている場合が多いですからガイドライン通りに会議をして共有して、把握してというプロセスに一体どれだけの時間を費やせるのか、も不明です。

そんなことに時間を費やすのであればハンドルを握るほうが早い、と思う人もいらっしゃる。

時は金なりです。

時間を割く=人件費がかかっている、運行できるはずだった運行運賃がなくなる、ということにつながります。

話し合ったとしても「誰がどこにどれくらいの割合で」費用を負担するのか、ということは運送業と荷主企業との話し合い。それも落としどころの見えない、出口の不明確な話し合いのスタートでしかないのです。

パレット等の活用!の落とし穴

バラ積みなんか時代遅れ。バラ積みやらしてるからドライバーになりたい人が増えない。

ええ、ごもっともです。

私もできるならすべての荷物をパレット化してもらいたい。そのほうがトラックもつかまりやすいですからね。

ですが、ここも落とし穴があってパレットもかご台車もタダじゃありません

パレット、かご台車、荷役が楽な設備にはもちろん持ち主や貸主がいるのです。

市場などで見られる空パレに「このパレットは〇〇の物です。必ずご返却ください」と明記されているのを見たことがある方もいらっしゃるでしょう。

でも、そのパレットは持ち主の会社ではない場所にあります。元の持ち主に返却されていないことが容易に想像がつきます。

だから自社の設備を外に出したくないという荷主、運送会社が増え、バラ積みだと積載率がーっていうよりも何よりも無駄なお金を出したくないと思うのも無理はありません。

つまり、パレットの返却もできないのであればバラで積んでくれよという荷主側の意図もチラリ見えたりはするんですよね。

でもそれはすごくよくわかります。

企業だからこそ当たり前のコストカットです。

ですが、国のガイドラインではここでも「パレット等の活用」を推奨しています。

パレットの活用を検討してくださいね、わかりましたかー?で終わっている。

荷主企業、あるいは運送会社にお金を出してもらって荷役設備を整えなさいね、という指導だけして終わり。になっています。

現状、ドライバーさんたちの中にはまだまだバラ積みで運行している人も沢山います。バラ積みでも自分の体力をしっかり温存し、運転に回せるエネルギーを持ち合わせている。

それくらい体力の使い方もわかっている人が多い。

だから別にパレット活用してね、と推奨しなくてもその分(パレットのレンタル代や購入費を)給料に転嫁してもらえるのであればやるよ。という方は相当数いらっしゃるのです。

解決策で「ドライバーのお給料水準を上げる!」が言えない無解決さ

トラックドライバーは一昔前は稼ぐ職業の花形でした!という文章をこれまで何度も目にしてきました。

書き手の意向としては「今は稼げないけれど」という前置きが付くんでしょう。

それくらいトラックドライバーの平均年収はその他の職業の平均年収よりも低い結果が出てしまっているのです。

そもそも、2024年問題の課題は「働き方改革」による長時間労働の是正、非正規労働者の処遇改善であり、お給料を上げることは課題に含まれていません。

ですが、労働時間をできるだけ短くしよう!というためには運送業のような「労働集約型」の産業では働く人が沢山必要になります。

では、そのために何が必要か。

「なりたい!」と思ってもらえる魅力が必要です。

そして「なりたい!」と思ってもらう魅力は「お給料」です。

なのに2024年問題ガイドラインにはお給料を上げるガイドは掲載されていません。

お給料を上げる部分に国が関与できないのであればトラガールプロジェクトよりもトラックドライバー税制優遇プロジェクトでもやってくれよと思います。

Society5.0と運送業

産業革命では蒸気機関が導入されたことで大量の紡績職人の仕事がなくなりました。

日本も今「Society5.0」という産業革命(イギリスの産業革命から数えて第四次産業革命と呼ばれてるそうです)を進めています。

Society5.0では産業のあらゆる場面でロボットやAI、IoTを取り入れ、スマートで労働人口が少なくなっても産業が回るような経済基盤を作ろうとしています。

こういった背景があるから私もふと感じてしまったんですよね。

国は2024年問題を盾に職人ドライバーを淘汰させようとしてるのではないか、と。

国が求める産業の未来像には自動運転トラック、ドローンなど新しい技術でより少ない労働者数で回す概念しかないように見えるのです。

だから、働く人が沢山いることで成り立っていた運送業の立役者たちの花道を作るわけでもなく、2024年問題として「解決するためには淘汰も必要なんだよ・・」みたいな顔してさよならさせていく気ですか?とここでささくれのような意見を述べさせていただいています。

労働集約型(労働の主要な部分を人間の労働力に頼っていて、売上高に対する人件費の比率が高い産業)の運送業を反対の「資本集約型」に変換しようとするのは中々に大変です。

なぜなら変換をする過程で「その産業に携わる人たちによる反対運動が起こる」からです。

その数が多ければ多いほど抑え込むのが大変になる。

だから国は「2024年問題」という「法律から変わるし変えなきゃしゃーないやん」としか言えないような外堀を固めて運送業を資本集約型産業にしたいんだろうなと思ってしまいます。

「誰でもなれる」職業。を信じる浅はかさ

自動運転、パレタイズの荷物、中継輸送が始まれば今までのような職人レベルの高度なレベルのドライバーさんでなくて「誰でもなれる」職業ドライバーでできると信じてやまないんでしょう。

しかし、どうしてトラック陸送輸送が日本全体の大半(約5割)を占めているのか。

アメリカのようにトレーラーの台車だけ軒先に置いて現場を離れられる物流を日本がやっているのであればSociety5.0だろうが第四次産業革命だろうがやればいい。

でも日本のトラックは単車が多く、荷台を離して現場を離れることはまだまだできません。トラックとドライバーさんは常に行動を共にするので現場での対応力が求められます。

荷捌き、お客様への声かけ(積み込み、おろしの時の声掛けはとっても大事!)ができない人が来れば顧客満足度は下がるばかりです。それでは意味がありません。

JRのように運送業すべてを国営化するなんてこともきっとないでしょう。

民間企業に任せるのであればCS貢献度も考えなければいけません。

結局、「誰でもできる」仕事なんていうのは夢物語だと私は思っています

「誰でもできる」仕事なんて無い。ハードルを下げて入口を広げたとしても結局求められるのは今のドライバーさんと同じ力量になるのです。

まとめ

トラックドライバーという職業は、長らく職人気質で憧れの存在とされてきました。

しかし、2024年問題という課題が、この職業の未来に不透明さをもたらしています。

冒頭で「2024年問題は職人気質のドライバーさんたちを締め出そうとする手段」だと書きました。

私たちは彼らの仕事に頼りっぱなしでここまできました。

それを今になって「誰でもできるような職業に」しようなんていう思惑は浅はかでしかないし、現状のドライバーさんたちへのリスペクトがないと思っています。

現状を尊重しつつ、この職業の未来への適切なアプローチを模索することが必要だと私は考えています。

技術の進化と共に、新たな職業機会やスキルの要求が生まれ、トラックドライバーとその職業が持続可能な形で変化することを私たちはやっていかないといけない。

やっぱり国が考えるガイドラインよりも私たちが自分で考えて現状のドライバーさん達にどれだけ残ってもらえるかを考えないといけない。

お給料、労働環境含め、やることはいっぱいです。

がんばります。

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