2024年問題対策ガイドラインについてまとめてみた

2024年問題

6月2日、自民党の物流調査会が政府への2024年問題解決に向けた提言案をまとめました。

沢山の漢字、沢山のいい含み、沢山の曖昧さというウィットに富んだ内容でしたのでここで全容をごまとめてみます。

これに2か月もかけたのか。賢い方、生き方の知恵がある方が沢山いらっしゃるはずなのになぜ。が満載の内容になっていたのでとてもびっくりしています。

まぁ、こんなこと言うてても始まりませんし私の経験や知識が浅いためこのような言葉しか出てこないのかもしれません。この内容は実はすごく理にかなっている内容かもしれませんのでまとめて大局的に見てみようと思います。

まとめた後、自分がどう感じたのかもまとめていきます。

【「物流革新に向けた政策パッケージ」物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン】

2024年問題への物流向け解決案のタイトルがこちら。(長)

もうちょい現場が覚えやすくてリズム感あるタイトルのほうが皆「自分事」って感じてくれるはずなのにね。

もったいない。

で、このガイドライン策定の背景と趣旨をシンプルにまとめると下記の通り。

2024年の働き方改革でドライバーさんの働く時間が短くなります。

働く時間が短くなるので運べる量が減ります。

将来的に運べる量を減らさないために2024年まであと半年しかなくて急いで対応しなきゃいけないから経産省、農林水産省、国交省が管理する企業にやらせることをまとめます。

となります。

荷主事業者・物流事業者の取り組みに関するガイドライン(荷主向け)

では早速いきましょう。

発着荷主事業者向けの取組事案のうち「必要な事項」は下記の通り。

荷主事業者(長いのでここから先は「荷主」とします)に取り組みとして実施することが必要ですよ。と言っているのが上記10項目になります。

これを見て私が思ったことが3つあります。

1つ目。

誰がいつ、どこで、どのようにこの10項目の確認をするのか。と言うこと

ガイドラインには明確に記載されている適正化や把握事項が盛り込まれていますがそれを確認する方法や管轄省庁の記載は全くありません。

ん?どう言うこと?決めたら決めっぱなしって言うこと?誰に何を守らせることをルールとしているの?と言う疑問が湧いてきます。

2つ目。

この必要事項を遵守できない場合、荷主にはどのようなペナルティがあるのか

2024年問題が問題と言われる所以の1つとして「働き方改革骨子である労働時間を守れない企業への罰則」が明確化されている点が挙げられます。

運送会社にとっては懲役刑から罰金刑まで網羅されているこの労働基準法遵守が現状では非常に難しいとされ、2024年「問題」と言われているわけです。

そのため、運送会社は荷主に対して労働基準法遵守のために交渉をしていますが、現在まで続く長い「荷主優位」状態がその交渉を難航させています。

「おたくが無理なら他社に頼む」と言う常套句を使って運送会社の要求を跳ね除けてきた過去があるために運送会社は戦々恐々として交渉に及び腰になってきました。健全な交渉ができるようになったのは本当にここ最近ですが、やはりまだまだ交渉が加速しているわけではありません。

運送会社は働き方改革に伴う法律を守らなければペナルティ(実刑・罰金)を科せられます。

では、荷主企業はどうでしょうか?

荷主も労働基準法に違反すればペナルティは科せられます。しかし、運送会社の労働時間を左右する主な要因は荷主企業による待機時間や荷役作業、深夜割適用させるための時間になります。

つまり、運送会社側ではどうすることもできない事柄がほとんどです。

その要因を作る側が「運送会社の労働時間を減らすためにやるべきこと」を守らない場合のペナルティがどうして設定されていないのでしょうか?

ここが不思議でならないのです。

そして最後。

ここが一番重要だと思っているのですが、ガイドラインを作るにあたってどのような問題提起があったのか?と言うこと。

ガイドラインというのは問題提起→問題への対応→対応する組織が明確にされたものなはずなのに、ここでは問題への対応(というかやっておけよと言う一覧)しか記載されていません。

ガイドラインにたくさん出てくる単語「効率化・合理化・適正化」。現状がこうだから⚪︎%効率化するために△△を行う。とする方がわかりやすいし理解度があがる。

なのにそれを明確にしない。

結局は労働時間を少なくしても現状と同じだけ運べよ、と言う号令でしかないなという印象です。

結局、中にいる「人」が置いてけぼりなんですよね。彼らのモチベーションは数値化できないかもしれないけど、モチベーションを上げるための対策は数値化できるはずです。(例:△△と言う対策をとったので有効求人倍率が⚪︎⚪︎%ダウンしました、荷主勧告を行いペナルティを科したため運送会社から提案する交渉が⚪︎⚪︎%実現しました、など)

ですが、上記の例をやろうとすればチェック機関が必要になるんです。チェック機関があればこそ、結果までのプロセスや過程がみえる。そういう経緯を公開することが「開かれた政治」にもなるんじゃなかろうか、とも思っています。

そして、上記必要項目以外に「実施が推奨される事項」が11項目あります。その項目は下記の通り。

  • 予約受付システムの導入
  • パレット等の活用
  • 入出荷業務の効率化に資する機材等の配置
  • 検品の効率化・検品水準の適正化
  • 物流システムや資機材(パレット等)の標準化
  • 輸送方法・輸送場所の変更による輸送距離の短縮
  • 共同輸配送の推進等による積載率の向上
  • 物流事業者との協議
  • 高速道路の利用
  • 運送契約の相手方の選定
  • 荷役作業時の安全対策

荷主事業者・物流事業者の取り組みに関するガイドライン(運送会社向け)

こちらも把握、是正、適正化など「ざっくり」感が否めません。

と言うかこんなことずっとやっとるわい。と言う内容を文字にしただけのことじゃないのか?と思わざるを得ない内容です。

よくこれで会議OKになったなぁとびっくりしています。

結局、ここでも同じですがチェック機関がないことが問題じゃなかろうかと思います。

経産省、農林水産省、国交省というすごい3省がまとまってやっていこう!というすごく有意義な事案なのに中身空っぽじゃ勿体なさすぎるんです。

荷主勧告ができるのは唯一、経産省と内閣府管轄の公正取引委員会だけ。

国交省は荷主勧告ができないため、運送業管轄省庁では荷主へのチェック機関を作れないのが実態です。経産省や内閣府管轄の公正取引委員会がチェック機関としての役割をしっかり果たしてほしいし、国交省は現場の声を上に上げるインフラを作っていただきたいと思います。

そして、多重下請構造について言及されていますが、結局ここも「多重下請構造の是正」だけで終わっています。つまり、是正して改善してね自分らで。ということになります。

ここは国交省がメスを入れたっていいと思っています。多重下請構造については全日本トラック協会が「適正取引確保や安全義務の観点から、すべての取引について、原則2次下請までに制限する。なお、2次下請けは荷主から見て3つの事業者が取引に関与している状況をいう」とされています。

ですがこの取り決めに法的拘束力は一切ありません。

ただ決めただけです。全ト協が。

だから決めただけで終わっているし是正も何もチェックしていないから「多重下請だよ!」という声の拾い上げもできていません。これでは決めっぱなしで終わっていると思われても仕方がない。

たくさんの大人が集まって決めたことについてはしっかり守っていこうよ、と思うのです。

そして、物流事業者が「実施することを推奨される事項」が下記のとおり。

  • 物流システムや資機材(パレット等)の標準化
  • 運賃水準向上
  • トラックの予約受付システム等の導入
  • 共同輸配送の促進、帰り荷の確保
  • 倉庫内業務の効率化
  • 入出庫ロットの大口化、平準化、受発注時間の前倒し
  • モーダルシフト、モーダルコンビネーションの促進
  • 中継輸送の促進
  • 高速道路の積極的な利用
  • 作業負担軽減等による労働環境の改善
  • 働きやすい職場認証制度及びGマーク制度の推進
  • 下請取引の相手方の選定

まとめ

今回は2023年6月2日に出されたガイドラインをまとめてみました。

まとめてみた結果、私が思ったこと。

PDCAはどうするの?どのように誰が解決していくの?運送業にだけペナルティを与えるだけの結果は変わらないの?でした。

疑問だけが残った感じです。

ですがあくまでもこれはガイドライン。骨子案が出てそこからしっかり派生して確認組織ができたり、対策案の具体化があったりなどの肉付けを期待したいと思いつつ、本音は「こっちでやるしかない」です。

運送業だけでしっかり地に足をつけて100年以上生業を続けてこれている、商いができているということは紛れもない事実。それだけ運送業が生活に密接に関わり、なくてはならない産業であることは明白です。つまり、私たちは強い産業なのです。

運送業が続いているということは中で働く人たちがいるからであり、ちょっとやそっとじゃなくならない産業です。モノを運ぶということは経済の第一段階において一番重要な要素。だからこそ、今後交渉を行なっていく時は荷主企業と「パートナーシップ」を結ぶビジネスパートナーとして決して横柄にならず同じ立ち位置で落とし所を決めていこうと私は思います。

ガイドラインを見て残念な思いはあったけれど、民間でできることはやっていくしかないし現場が声を出せるようなインフラを作ってくれる官僚さんたちはきっといる。運送業も荷主も政府も中身はみんな同じ人。感情があるからこそ変われるはずだと思っています。

明日からまたがんばりましょう。

運行中のドライバーさん、くれぐれもご安全にです。

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