運送会社には⚪︎⚪︎がない。

運送業

先日のブログ、沢山の方が読んでくださっていました。本当にありがとうございます。

そのブログの最後に現在、2024年問題の本当の問題は運送業の本質的な問題が議論されていないことと書きました。

ではその本質的な問題とは何か。

その問題を解くヒントになるのが「運送会社に圧倒的に不足しているモノ」を考える事だと思っています。

運送会社に圧倒的に不足しているモノ

運送業以外の会社にはあって運送業にはないモノ。タイトルにもしていますが

なんだかわかりますでしょうか?

先日現場有識者オンライン会議でこの話をしたらすごく驚かれたのですが

運送会社は「営業職」が圧倒的に不足しています。

というかほぼいません。

営業マンがいる運送会社は本当に本当に少ないです。

営業マンとは自社のサービスを売る人です。運送業であれば自社の輸送サービスを売る人です。そしてお客様との交渉窓口、現場立ち会い、見積もり提示、など営業に特化した人を指すのだろうと思います。

ですが運送会社はこの営業に特化した人がいません。「営業」という肩書きがあっても配車や運行管理と兼業しているもしくはドライバーさんが不足していたら急遽現場に出るというようなオールラウンダーになっていることがほとんどです。

経営者自らが営業、配車、運行管理、車両整備を兼任しているような会社さんもあります。

なぜなら運送業には営業マンよりトラックがまず必要になるからです。トラックがなければ運送業はできません。だから経営者がもっとも力と資金を入れるのがトラックとドライバーへの投資だからです。

トラックがあり、ドライバーさんがいれば成り立つのです。

ですが、ふと思ったんです。

果たしてこれでいいのかな、と。

運送会社と営業活動

営業職というのは自社の持ち味を売り込む仕事で、会社の「攻め」の姿勢になります。攻めは最大の防御と言われるくらいですので攻めることで会社の売り上げを守ることにもなります。なのに運送会社のほとんどにこの営業に特化した営業職がいない、足りていないのが現状です。

私自身、配車と営業両方していますがどちらか言えば「営業職」よりの配車係です。お客様に見積もりを出す、協力会社である実運送会社さんに依頼をし当日現場で考えうるリスクを考えて段取りする、必要があれば現場の立ち会いに行く、などがメインの仕事になります。

私の最大の武器は協力会社のドライバーさんそして配車係たちの仕事能力の高さ、事務処理能力の高さです。それを武器にしてお客様に営業を行なっています。難しい積み込みも軽々とこなしてしまうドライバーさんや「こんな忙しいのにどこからトラック見つけてきてくれたん?」とびっくりするくらい配車能力の高い配車係たち、そして受領書返却や必要書類をしっかり期限内に提出してくれる事務員さんたちの仕事の速さ。これは全て私にとって営業の武器になります。

運送会社の仕事は「ただ運ぶだけじゃない」のです。運ぶ前、運んでいる時、運んだ後もどれだけ責任を持って対応できるかがその会社の強みになると思っています。納品完了したらそれで終わり。それはきっと楽です。でもその後にもいろんな事務処理はついてくるし、次も同じ案件があったらすぐどんな仕事だったのかをお客様や協力会社にフィードバックしてスムーズに手配ができるように進めることも大切な仕事です。

でも、大部分の運送会社さんはここまで手が回っていません。

一人当たりに仕事量が多すぎてここまで手が回らない。考える間もなく次の仕事が入ってくる、対応しきれないというのが現実に起こっています。

それはきっと内勤者の人件費までを確保できていないからなのです。人件費も全て運賃収入からまかいますが運賃交渉ができないのであれば必要な人件費を確保することも難しくなります。図にするとこんな感じ。

このような実態があるからこそ出来上がったのが利用運送、水屋です。利用運送や水屋の会社は実運送会社の代わりに荷主へ営業活動を行っていて、多忙な運送会社の代わりに営業をする代理営業会社の役割を持っています。私も利用運送の配車なので前述したような営業活動ができているのです。

だから一概に利用運送、水屋を「悪」だと決めつけることはできません。今現在、利用運送や水屋はなくてはならない仕事です。

営業マンなんていらない、自分たちでできるし今までもやってこれた。というご意見もきっとあると思います。それはすごく素晴らしいことです。

ですが、これから先(特に2024年以降)は運賃交渉がかなり肝になってきます。その交渉を行う専門の人がいる方がきっと経営活動はうまくいくのではないかと思うのです。

2024年問題では「労働時間管理」が今まで以上に厳しくなります。運行管理、労務管理などの社内管理と運賃交渉などの対外交渉は人材を分けて考える方がより良い環境を作れます。そしてそのためにはしっかりとした設備投資費用や人件費が必要になります。

ですが設備投資や人件費UPは現状あまり現実的ではない提案だと思っています。では現実的にするにはどうするか。

人が無理なら仕組みを変える

この話の本質は「営業マンを雇うべきだ」ではありません。営業マンがいなくても運送会社は今までやってこれました。これからもその方向性は変えなくても全然大丈夫だと私は思っています。

本質は「会社ごとに適正な運賃を受け取り、適切に運送会社運営に充てていこうぜ」です。

適正な運賃を受け取るためには「運賃をもらうため」だけを仕事にする人がいる方がスムーズではないかとは思いますが現状そこに人件費を充てることが難しいことも理解しています。

ではどうすればいいのか。

今、現在であれば仕組みを変えることが最短ルートではないかと思うのです。

では仕組みとは何か?

運賃収受の仕組みです。

今考えられる仕組み(大雑把に)
  • 実運送会社が必要な運賃を定める
  • 中間業者の利ざやの上限設定
  • 帰り荷運賃制の撤廃
  • 運賃内訳設定の基準作り(実運賃+高速料金+付帯作業費+サーチャージなど)
  • 実運送会社の利益最優先・最重要視のツール作り(例:下限運賃設定マッチングサイトなど)

仕組みを変えることでなくなる仕事が出てくるかもしれません。その最たるものが「利用運送」であり「水屋」です。私は利用運送事業を行う配車係ですが本当に運送業のことを考えるのであれば中間業者は不要だと思っています。

実運送会社が儲かることができればそれに越したことはない。実運送会社がいるからこそ運送業が成りなっているからです。ですが、すぐにこの現状を変えられないのでルールとして設定しやすいものから仕組みを作ることができればいいなと思っています。

それに利用運送で生計を立てる会社もたくさんあります。利用運送の仕事によって荷物を獲得できていたという運送会社もたくさんあることを知っています。だから割り切ってしまうのはとても難しい。

ですが、本当に本気で変えなければならない2024年がもうそこまできている今、今までと同じことをしていては運送業は変わらないと私は思うのです。

自分事にしていこう

日本全国の一般貨物の運送会社の数は57,856社にものぼります。(令和4年3月31日国交省調査結果より)車両台数は1,438,459台。

相当な数の会社があり、トラックがあり、そこで働く人たちがいます。会社の数よりも働く人たちの数の方が圧倒的に多い。つまりさまざまな価値観があるということ。

私が言っていることは1つの価値観にすぎません。このブログに書く内容だって賛同してくださる方がいれば反対意見を持っている方もいる。それが当たり前です。

だけど、きっと「お給料を上げて充実した毎日を送りたい」という根本的な気持ちはみんな同じだと思っています。私もお金大好きです。お給料だってもっと上げたいと思っているしそのお給料を使っていろんな経験をしたいし欲しいものをたくさん買いたいし旅行だって沢山したいです。

だから自分のお給料が上がるためにまず何が必要なのか、を考える。

会社の利益が上がれば自分も潤うと考えるのが一番シンプル。

では、会社の利益はどこから生まれるのか?燃料や高速使用を切り詰めること?人件費を削る?

一番の利益は運賃収入から生まれる!

というのが私の価値観です。

だから全てにおいて最優先は運賃収入を上げることだと思っています。

運賃収入を上げる→利益が増える→人材・設備に投資ができる→戦う武器が増える

こういうサイクルを運送業に作りたいのです。

仕組みを変えることでもらえる収入を安定化させることが大事だし運賃交渉ができない実運送会社さんに変わって私たち元請や利用運送の人間がお客様としっかり交渉することだってとっても大事。人任せじゃなくて自分事だと思ってやっていくことがとても大切になるんじゃないかなと考えています。

自分の売上、利益も大事だけどそれ以上に「私」についてきてくれる運送会社さんが「とらこについてきてよかったわ」と思ってくれる方が将来的なポテンシャルがあります。連鎖して全員が成長できるはずだと信じています。

それなのに運送業の本質の議論が全然足りない。

運賃を上げるために必要な議論をしていないのが本当に残念でならないです。

運送業以外の人たちがいう「世論」に流されず、私たちの業界は今運賃UPを求めているよ!と言っていこうよって思います。

一番大事な自分たちの収入源をもっともっと議論しなきゃ。荷主企業やユウシキシャによる「積載率UP」「荷捌き効率UP」の議論に流されず、本質をもっと議論して世に出していこうよ。と思います。

だから私はこれからも言い続けようと思います。

運賃上げていこう!って。

今回も長々とお付き合いくださりありがとうございました。

とらこ

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